革新的ソウルアルバム What's Goin' On
Marvin Gaye / What's Goin' On
マービン・ゲイ / ホワッツ・ゴーイン・オン
1. What's Going On
2. What's Happening Brother
3. Flyin' High (In The Friendly Sky)
4. Save the Children
5. God Is Love
6. Mercy Mercy Me (The Ecology)
7. Right On
8. Wholy Holy
9. Inner City Blues (Make Me Wanna Holler)
10. God Is Love (Bonus Track)
11. Sad Tomorrows a/k/a "Flyin' High (In The Friendly Sky)" (Bonus Track)
ソウルという分野においては、60年代はシングルの時代であって、70年代に至ってもまだシングルとアルバムが半々くらいの割合と考えていいだろう。そういう意味では、アルバムを熟に60〜70年代度売るを評価するのは難しい点も多々あるわけで、実際のところ、アルバムという形での完成度に優れたアーティストの魅力を最大限に引き出されたものとなれば、かなり数は限られてくると思う。
そんな中にあって、明確なコンセプトに沿って、全てが高いレベルで機能しあった、ある意味ソウル・アルバムとしては異質ともいえる革新的、かつ神懸り的な領域に到達したマーヴィン・ゲイの本作品は、アルバム単位で評価するならば、全ての要素を凌駕する一枚と言っても過言ではないと思う。60年代、徹底した管理体制の中、モータウンを代表する男性シンガーとして数々のヒットを放ったマーヴィン・ゲイは、やがて操り人形的な自分自身の状況から脱却するべく、自らをプロデュースする権利への獲得に向う。71年、様々な久能や困難を乗越え、ようやく発表に至った本アルバムは、従来のモータウン流では常識だった役割分担システムとは異なり、マーヴィン・ゲイに創作に関わる全ての権限と権利の自由が委ねられた、モータウンにとっては画期的なアルバムとなった。斬新な音楽性、反体制的内容に発表を躊躇ったモータウンの思惑と相反するように、このアルバムから『ホワッツ・ゴーイン・オン』 『マーシー・マーシー・ミー』 『インナー・シティ・ブルース』の3曲がR&Bチャート1位に輝き、マーヴィン・ゲイはその才能を世に知らしめると同時に、60年代ソウル・ミュージックの制作概念を大きく覆したこのアルバムは、以降のソウルシーンに大きな影響力を持つこととなった。
勿論、アルバムのもつ重要性はそうしたシステムの枠を打ち破り、新たな可能性を示した事に留まるレベルではなく、まずは神懸り的なまでの内容の素晴らしさに賞賛を求められるべきだろう。ベトナム戦争、公害問題、黒人共同体の同胞への呼びかけ、宗教的テーマなど・・・深いメッセージ性が込められている歌詞、多重録音が効果的に利用された神秘性に満ちたマーヴィン・ゲイのヴォーカル、グルーブに豊潤なブラックネスをもたらす複雑なパーカッション、ストーリーをさらに際立たせるデイヴィッド・ヴァン・ドゥピットによる陰影豊かなアレンジ、アルバム前編に貫かれた独特のジャージーな浮遊感etc・・・・・
いずれも従来のソウル・ミュージックの手法とはかけ離れていながら、ただし強烈にソウルを感じさせてくれるアルバムだ。そしてこれらは、今改めて耳にしても、独自性に富む表現、一つ一つの音色の持つ鮮やかな表情には、古びた印象は微塵も感じられないことに、改めて驚かされる。このアルバムを超えるものは今後現れないだろう・・・と思わせるマーヴン・ゲイという稀有な才能と様々な偶然・タイミングが融合して誕生した傑作アルバムだと思う。
